学びの箱庭~塾講師の取組み~

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【子どもの読解力アップ】押さえておきたいミクロとマクロ、2つの読解力(小学生向け読解力問題のおまけつき)

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読解はミクロとマクロの往還

 

 国立情報学研究所教授の新井紀子氏は著書『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』の中で、読解力についてこう述べています。

 

往還とは“行ったり来たりする”という意味です。ミクロである“短文”の理解と、マクロである“文章全体”の把握を繰り返しながら読解は進んでいくということですね

 

であるなら、お子さんの読解力アップを目指す場合

 

ミクロの読解力=一文や短文を的確に理解する力

マクロの読解力=文章の全体を俯瞰で捉える力

 

という2つの読解力があることを意識し、まず、お子さんのミクロの読解力が十分であるのかを確認しなければなりません。1つ1つの文の意味が分からずして文章全体を把握することなど不可能だからです。

 

ところが困ったことに、一般的に読解力不足というと、長文の読み込みを前提としたマクロの読解力にスポットをあてることが多いのです。その場合、

 

・具体⇔抽象の置き換え

・因果関係

・対比

 

 などの各文の役割やつながりの把握に重点を置くのですが、ミクロの読解力が足りない者に対して、このマクロ寄りのアプローチをしてもほとんど効果はありません。当たり前ですよね。つながりどころか、短い文ですらその意味が掴みきれないのですから。

 

であるにもかかわらず、読解力アップのために子どもに与えられるドリルや問題集のほとんどがマクロ読解力に重点を置いたもの。まだ、その段階ではない子にとっては分からないし面白くないしで、途中で投げ出すのも無理からぬ話です。

 

しかし、こんな状況に一石を投じたのが、冒頭に紹介した新井氏の著書だったのです。

 

この本は、1つの文の意味ぐらい理解できる、またはできるようになるだろうと皆が見過ごした部分を、いやいやそんなことないですよ、子ども達、なんだったらいい大人も全然読めてませんよ、という現状を白日の下にさらしたのです。

 

その新井氏は現在、RST(リーディングスキルテスト)を主導しています。そのHP上では「基礎的な読む力を測るテスト」と紹介されています。

 

私自身はこのRSTを受けたことはないのですが、新井氏の著書や関連文献などを参考に自前で問題を作成し、塾の生徒に実施しています。

 

ということで、今回は私が作成したミクロ読解力を試すためのテストを数問ご紹介しておきます。

 

これらの問題は小学校5,6年生対象で、実際にウチの塾で生徒達に出しているものです。もし、お子さんが手こずるということならば、ミクロ読解力不足を疑った方がよいかもしれません

 

それでは問題にまいりましょう。解答は最後にまとめておきます。なお、単語の読みや意味が分からない場合は、教えるなり、辞書で調べさせるなり、適宜親御さんのフォローをお願いします。

 

問題


【問一】 次の文を読みなさい。

 

国家が領有する陸地のことを「領土」といいます。国家はその領土に対して主権がおよびます。また、領土の海岸から12海里(約22.2㎞)までの海域を「領海」といい、領土と領海の上空を「領空」といいます。


上記の文に書かれていることが正しいとき、次の文に書かれていることは正しいか。「正しい」、「まちがっている」、「これだけからは判断できない」のうちから答えなさい。

 

A国はB国より領土と領海が広いため、領空もB国より広いといえる。

 

 

【問二】 次の文を読みなさい。


血管に傷がつくと、まず血小板が集まって傷口をふさぐ。ただ、血小板はとても壊れやすい。だから、そこへ血液を固めるものがどんどん集まってきて、フィブリンという網のような膜を作り、しっかり傷口をふさぐ。

 

上記の文に書かれていることが正しいとき、次の文に書かれていることは正しいか。「正しい」、「まちがっている」、「これだけからは判断できない」のうちから答えなさい。


血管に傷がつくと、そこに血小板とフィブリンが集まって、しっかり傷口をふさぐ。

 


【問三】 次の文を読みなさい。


長さ24㎝の針金を折り曲げ長方形をつくったところ、よこの長さは(    )㎝になった。

 

上記の文脈において、( )にあてはまる数としてありえるものを選択肢のうちから1つ選びなさい。

 

①6
②10
③14

 

 

 

解答・解説

 

【問一】 正しい

 

’【問二】 まちがっている

フィブリンは傷口に集まってくる物質ではありません。

 

【問三】 ②

24㎝の針金を折り曲げてできる長方形はたてと横の一辺の和が12㎝でなければなりません。この条件を満たす可能性があるのは①と②ですが、①の場合、できた四角形が正方形になってしまいますので、この問題文の解としては誤答になります。