次の文章を読み問に答えなさい。(解答解説は下部に記載)
目覚めると俺の前には見知らぬ1人の男が立っていた。その男は自分を天界の審議官と呼び、俺はもう死んだのだと言う。
『だから、何度も言ったようにあなたはもう亡くなったのです。通り魔に背中を刺され、その傷による出血が・・・・』
『分かった。・・・・もういい。』
幾度となく不毛なやり取りを繰り返したが、どうやらこの状況が夢でもなんでもないことだけは理解できた。
『・・・で、その審議官であるあんたが、なんで俺の前にいるんだ?』
『やっと話を進めることができますね。実は、われらが仕える神から、あなたが望むのならば➀1度だけ生き返らしてもよいとの命令を受けているのです。』
『はっ?・・・な、なぜ?どういうことだ?』
目が覚めたらいきなり死んだと言われ、そして、今、生き返ってよいという。全くもって訳が分からない。
『実は、以前神が自らの姿を蜘蛛に変えて下界に視察に行かれた時、あなたが助けてくれたそうなのです。なんでも、踏みつぶされそうになったところを守ってくれたとかで・・・まあ、そのお礼、天恵だとでも思ってください。』
もちろん、蜘蛛を助けたことなど全く覚えていない。ただ、大きなチャンスが与えたられたのは確かだ。
『とにかくどうしますか。生き返りますか。』
極めて事務的な口調で審議官が俺に尋ねた。
『あ、当たり前だろ!すぐに生き返らしてくれ!』
『分かりました。生き返りの日時ですが、死ぬ1日前から死ぬまでの間で好きな時間を選ぶことができます。』
『なるほど、死に戻りってことか。だが、1日も要らない。1時間、いや10分前で十分だ。』
あの時、俺は待ちに待ったライブに行く途中だった。今さらまた1日待つなんてまっぴらごめんだ。
『いいでしょう。それでは生き返りを死ぬ10分前に設定します。特別にここでの記憶は残しておきますので、生き返ったらしっかり通り魔を回避してください。』
その言葉に俺が頷くと、すぐにまばゆい光が辺りを包んだ。恐らく、この光が消えるころには、人生の第2ラウンドが始まるのだろう。まずは、同じ道を通らないようにしなければ・・・しかし、
『②残念ながらあなたは死にました。』
光がおさまると、もう見知った顔である男が俺にそう告げた。
【問一】 傍線①『1度だけ生き返らしてもよいとの命令を受けているのです。』とありますが、なぜ神は”俺”に生き返るチャンスを与えたのですか。その理由を書きなさい。
【問二】 傍線②『残念ながらあなたは死にました。』のとおり、生き返ったはずの俺はまた死んでしまいました。その理由を説明する次の文章の空欄に適切な言葉を入れなさい。
俺は通り魔に刺されたものの即死ではなかったため、死ぬ10分前は【 】から。
(問題は以上です)
【解答・解説】
問一 (例)下界で助けてもらったお礼をしたかったから
問二 (例)すでに刺された後だった
意味が分かると怖いというより、推理もののようなテイストになってしまいました。通り魔に襲われた時と死亡時のタイムラグに気づくかどうかがポイントです。死ぬ10分間はすでに刺された後であり、意識もなかったのでしょう。