高校入試に出題された古文を題材に、現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!まず、この独特の世界観を理解することが古文読解のポイントですよ!!
さて、今回の作品は『沙石集(しゃせきしゅう)』より『南都に、歯取る唐人ありき』です。このお話にも強烈なツッコミどころが・・・。赤字は私が入れたツッコミですが、皆さんもいろいろ考えてツッコンでみてくださいね!
『現代語訳』
奈良に歯医者をやっている中国人がいた。
ある在家人で、けちで損得勘定を優先していつも商売心だけあって財産もある人が、虫歯をとってもらおうと思って、中国人のところへ行った。
歯を一本とるためには、銭二文かかると定めてあったのに、「一文で虫歯を取ってください」と言う。《おっ、グイグイいくやん?》
ちょっとしたことであるので、そのまま取ることもできたのだが、気分が悪くなって、「絶対に一文では虫歯をとりません」と言う。《そらそうよ!》
少し長く口論していたが、全く虫歯を抜いてもらえなかったので、「それならば、三文で歯を二本取ろう」といって、虫歯となっていないような良い歯を加えて、二本の歯を抜いて、三文を支払った。《なるほど、3÷2=1.5でお得やなって・・・いや、ちゃうやろぉぉ!!》
内心では得したと思ったけれど、虫歯となっていない歯を失ってしまった。大きな損である。これは言うまでもなく、大変に愚かなこと、ばかげたことである。
いやあ本当に沙石集はツッコミの聖典ですね!!今回は華麗なノリツッコミを炸裂させませたが、いかがだったでしょうか。 以下に今回のお話の原文も掲載しておきます。
『原文』(出題:鳥取2023)
南都に、歯取る唐人ありき。ある在家人の、慳貪にして利養を先とし、事にふれて商ひ心のみありて、徳もありけるが、
「虫の食ひたる歯をとらせむ。」
とて、唐人がもとに行きぬ。歯一つ取るには、銭二文に定めたるを、
「一文にて取りてたべ。」
といふ。少分の事なれば、ただも取るべけれども、心様の憎さに、
「ふつと一文にては取らじ。」
といふ。やや久しく論ずる程に、おほかた取らざりければ、
「さらば三文にて歯二つ取り給へ。」
とて、虫も食はぬに良き歯を取り添へて二つ取らせて、三文取らせつ。心には利分とこそ思ひけめども、疵なき歯を失ひぬる、大きなる損なり。これは申すに及ばず、大きに愚かなる事、をこがましきわざなり。