古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!
さて、今回の作品は「古今著聞集」のエピソードである『博雅三位の家に』です。どうぞお楽しみください!
【このお話のツッコミポイント】
改心が早過ぎる。
『原文(入試用問題文)』(出題:群馬2024)
博雅三位の家に、盗人入りたりけり。三位、板敷(いたじき)の下に逃げ隠れにけり。盗人帰り、さて後、這ひ出でて家の中を見るに、残りたる物なく、みな取りてけり。ひちりき一つを厨子(ずし)に残したりけるを、取りて吹かれたりけるを、出でて去りぬる盗人、はるかにこれを聞きて、感情おさへがたくして、帰り来たりて言ふやう、ただ今の御ひちりきの音(ね)をうけたまはるに、あはれに尊く候(さうら)ひて、悪心みな改まりぬ。取る所の物どもことごとく返したてまつるべしと言ひて、みなおきて出でにけり。昔の盗人は、また、かく優なる心もありけり。
ひちりき・・・竹製の笛
厨子・・・物を載せたり、しまったりする戸棚
『現代語訳』
博雅三位の家に盗人が入った。三位は、板敷の下に逃げ隠れた。盗人が帰り、その後、(床下から)はい出て家の中を見ると、残っているものはなく、(泥棒が)全て取ってしまっていた。ひちりき一つだけを置物厨子の上に残してあったのを、(三位が手に)とって吹いていらっしゃると、出て去った盗人が、遠くでこれ(=三位が吹いているひちりきの音)を聞いて、感情が抑えられなくなって、(三位の家)戻って言うには、「ただ今の(あなたがお吹きになった)御ひちりきの音をお聞きすると、しみじみと(した気持ちになり)尊く感じて、(私の)悪心がすっかり改まってしまいました。盗んだ品物は全てお返しいたします。」と言って、みな置いて出ていった。昔の盗人はまた、このような優雅な心もあったのだ。
『ツッコミ解説』
以前このブログで紹介した「安養の尼上の小袖」の話もそうなんですが、人の家に押し入って根こそぎ盗っていくほどの悪党なのに改心が早過ぎる。
今回の話はひちりきの笛の音であっさり改心させたわけですが、その威力たるやハーメルンの笛吹き男を彷彿とさせます。博雅が光、ハーメルンが闇属性という感じですか。
さて、締めの文章も現代人には受け入れにくい。大体、優雅な心を持つ盗人って何なの?えっ、ひょっとしてルパン・ザ・サード的な人なの?でもルパンは人の家に押し入らないから。可哀そうに博雅なんて床下に逃げちゃってるわけだから。どう考えても優雅さなどはないですなあ。
まあ普通に犯罪案件なんですけど、それをなんとなくいい話風に収めてしまう感覚が古文らしいのかもしれません。
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