学びの箱庭~塾講師の取組み~

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高校入試”ツッコミ”古典⑯『うぐひすは』~浮世物語~【原文先行版】

 

古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!

さて、今回の作品は「浮世物語」のエピソードである『うぐひすは』です。どうぞお楽しみください!

【このお話のツッコミポイント】

鳩、絶滅しちゃうね。

 

『原文(入試用問題文)

うぐひす(鶯)は、巣を作る事はなはだうつくしく、篠(ささ)の葉を人の髪筋にてまとひ、その形(なり)はまろくしてそこ深く、餌(ゑ)ふごのかたちに似たり。鳩、これをならはんとて、うぐひすに近づきて、巣の作りやうを見るに、ほそき竹ぎれ、柴の折れを下に渡し、その上に巣をかくる。それまでも見とどけず、竹、柴を渡したるばかりを見て、もはや心得たりと思ひ、をのれ巣を作る時は、木の枝に柴の折れ四、五本を渡し、その上に木の葉をしきて卵(かひご)を生む。卵、柴の折れを渡したるあいだよりもれ落ちて、打ちくだけて育ちがたし。口伝も師伝も受けずして、ただ見及び聞き及びたるにまかせて、根に入らぬわざどもを、知らぬことなくおぼえ顔なるは、鳩の巣にたとへたり。

【注】篠・・・群がって生える細い竹、餌ふご・・・鳥の餌を入れる竹籠、柴・・・山野に生える小さな雑木、口伝・師伝・・・師匠が弟子に重要な教えを授けること。口伝えで行うものを口伝という。

 

『現代語訳』

うぐいすは、巣を作るのがたいへん上手で、その巣は篠の葉を人の髪の毛でまきつけてあり、形は丸くて底は深く、餌ふごの形に似ていた。鳩は、これをまねようと思って、うぐいすに近づいて、巣の作り方を見ると、細い竹ぎれや柴の折れた枝を下に掛け渡し、その上に巣を掛けていた。そこまで見届けないで、竹や柴を掛け渡してあるのだけを見て、もうやり方は分かったと思い、自分が巣を作るときは、木の枝に柴の折れた枝四、五本を掛け渡して、その上に木の葉を敷いて卵を産んだ。卵は、渡した柴の枝の間からこぼれ落ちて、粉々に割れて育たなかった。口伝も師伝も受けないで、ただ見たり聞いたりしたことだけに従って、根本の技術を知らないままに知ったような顔をしているのを、鳩の巣にたとえているのである。

 

『ツッコミ解説』

何をたとえたいのか、伝えたいメッセージはよく分かります。ただ、あまりにも鳩さんをバカにし過ぎだと思うんです。これでは卵が孵りません。早晩絶滅です。

そもそも鳩さんは鏡に映る姿を自分自身だと認識できるほどの知能を持ち、遥か1000㎞離れた見知らぬ場所からでも自分の巣に戻ることのできる強い帰巣本能を持っています。カラスほどではありませんが、知能が崩壊しているダチョウさんに比べれば随分賢い鳥なのです。

ただ、確かに鳩さんの巣作りはメガトン級の稚拙さ。このお話のようにやり玉に挙げられてしまうのも致し方無いのかもしれません。

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ですがこれも頭の悪さではなく、むしろ効率性を極限までに追い求めた結果、ゴールを通り過ぎていたと前向きに捉えたいと思います。