学びの箱庭~塾講師の取組み~

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高校入試”ツッコミ”古典④『船に刻みて剣を求む』~呂氏春秋~【原文先行版】

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高校入試に出題された古典を題材に、現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!まず、この独特の世界観を理解することが古典読解のポイントですよ!!

さて、今回の作品は『呂氏春秋』より『船に刻みて剣を求む』です。この作品のツッコミポイントは・・・

例えが無茶すぎる!

というところです。具体例⇒主張という流れの文章ですが、例えがあり得なさすぎて主響かないんですよねぇ・・・それでは張り切ってツッコンでみてください!!

 

『書き下し文』

楚人に江を渉る者有り。其の剣、舟中より水に墜つ。にはかに其の舟に契(きざ)みて曰はく、『是れ吾が剣の従(よ)りて墜つる所なり。』と。

舟止まり、其の契みし所の者に従り、水に入りて之(これ)を求む。舟は已(すで)に行けども、剣は行かず。剣を求むること此(か)くのごときは、亦(ま)た惑はずや。

故法(こほう)を以て其の国を為(おさ)むるは此(これ)と同じ。時已に徒(うつ)れども、法は徒らず。此を以て治を為すは、豈(あ)に難(かた)からずや。

(『呂氏春秋』より)

 『口語訳』

楚の人に長江を渡った者がいた。(その途中)その人の剣が舟から水中に落ちた。すぐにその舟に目印を付けてこう言った。『ここが私の剣の落ちた所である。』と。

舟が止まった。舟につけた目印の所から水に入って剣を探し求めた。舟はもう(剣が落ちた場所から)動いているのに、剣は落ちた場所から動かない。それなのに剣を探すのに、このようにするのはなんと愚かなことではないか。

昔の法律にて国を治めるのはこれと同じことである。時勢は変化しているのに、法律は(それに合わせて)変化していない。そのような法律を使って統治を行うのはなんと難しいことではないか。

 『ツッコミ解説』

 ・・・はい。言いたいことは分かるんです。昔からの考え、手法などに固執せず、時勢の変化を捉え柔軟に対応しろ!!という、まあよくあるパターンですよ。でもね。前半の例え、いくらなんでも無茶過ぎやしません?舟に目印付けるってそんな人います?

中学生にこの問題を解かせると、想像の斜め上をいく例えに振り回される子も多いんですよ。だって、まさかそんな人いると思わないもん

こういうところが古典って難しいですよね。ある程度読み取っても現代人としての常識が邪魔をするっていう・・・みなさん気をつけてくださいね。

ちなみに『矛盾』の元ネタも楚人(楚という古代中国の国の人)のお話です。やってくれるよねぇ楚人!!