古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!!
さて、今回の作品は『宇治拾遺物語(うじしゅういものがたり)』から『ある僧、人の許にて氷魚盗み食ひたる事』です。現代人の感覚では『そうはならんやろ!!』というツッコミたくなるこのお話。どうぞお楽しみください!
【このお話のツッコミポイント】
落ち着いてよく噛みなさいよ。
『原文』(出題:千葉2024)
これも今は昔、ある僧、人のもとへ行きけり。酒など勧めけるに、氷魚(ひお)はじめて出で来たりければ、あるじ珍しく思ひて、もてなしけり。
あるじ用事ありて、内に入りて、また出でたりけるに、この氷魚の、殊(こと)の外(ほか)少なくなりたりければ、あるじ、いかにと思へども、いふべきやうもなかりければ、物語しゐたりけるほどに、この僧の鼻より、氷魚の一つ、ふと出でたりければ、あるじ、怪しう覚えて、
「その鼻より氷魚の出でたるは、いかなることにか」
といひければ、取りもあへず、
「このごろの氷魚は、目鼻より振りさぶらふなるぞ」
といひたりければ、人皆、「は」と笑ひけり。
『現代語訳』
これも今は昔、ある僧が人のもとへ呼ばれて行った。その家の主人が酒などを勧めたが、氷魚が(初物として)出回り始めたので、珍しく思って僧の膳に加えてもてなした。
主人が用事を思い出し、家の中に入り、再び僧のいる座敷に戻ってみると、この氷魚がかなり少なくなっていた。主人は、変だなと思ったが、客の僧の方から何の話もないのに、こちらから話題にするのも気がひけて雑談をしているうちに、この僧の鼻から氷魚がぷっと飛び出した。
主人は不審に思って、「あなたの鼻から氷魚が出てきたのはどうしたことです」と言うと、僧はすかさず、「この頃の氷魚は目鼻から降ってくるのですよ」と言ったので、人々は「わっ」と笑った。
『ツッコミ解説』
氷魚とは鮎の稚魚のことで体長は2,3センチメートル。それが、しばらく雑談した後に鼻から”それと分かる”形で出てきたという。一体、原形を留めたそれは雑談の最中、どこにストックされていたのだろう?
ああ・・・せめて慌てずに良く噛んでいれば最悪、鼻から出ていたとしてもそれとは気づかれなかったであろうに。消化にも悪いよ、きっと。
最後の僧の言い訳も大変厳しい。こんな苦しい言い訳、リアルで聞いたことありますか?現場の人々は大ウケしたようだけど、読者としては出来損ないyoutube動画の内輪ネタを見せられた感じがしてちょっとキツい。
【氷魚について(滋賀県農政水産部「滋賀のおいしいコレクション」より】
今回の イメージ図もbing image creatorにて作成。アニメ風にしないとグロいイラストが多くなって、なかなか難しかったです。
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