国語力の箱庭~塾講師の取組み~

「意味が分かると怖い話」を元ネタとした読解問題やボードゲームなど、学習塾のオーナー塾長が国語力について綴っていきます

高校入試”ツッコミ”古典⑮『成通鞠』~撰集抄~【原文先行版】

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古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!

さて、今回の作品は「撰集抄」のエピソードである『成通鞠』です。どうぞお楽しみください!

【このお話のツッコミポイント】

小男・・・なの?

 

『原文(入試用問題文)

さいつ此、侍従大納言成通と云人おはしけり。壮年より鞠を好みて、或ひはひとりも、或ひは友にまじはりても、これを興じて、日に絶ゆること侍らざりけり。ある時、最勝光院にて、ことに心をとめて蹴給ふに、いづくの物いづかたより来たりたりとも知れぬ小男の見目ことがら貴やかなる、うづくまりして侍り。大納言あやしみをなして、

「たれにか。」

と尋ね給ふに、

「我はこれ鞠の精也。きみのめでたく蹴給ふによりて、鞠のまことのすがたを現すになん。」

とて、かき消ちうせにけり。其後もたびたび以前のごとくなる男いで、目をもたたかず鞠をみて侍りけり。いと不思議にぞ侍る。

 

『現代語訳』

先ごろ、侍従大納言成通という人がいらっしゃった。壮年のころから蹴鞠を好んであるときは一人で、あるときは友人といっしょに、これを楽しんで、一日たりともしないことがなかった。あるとき、最勝光院で、とりわけ熱心に(鞠を)蹴っていらっしゃると、どこのものかどこから来たともわからない小男で、顔かたちの上品な人が、座り込んでいる。大納言が不思議に思って、

「誰なのか。」

とお尋ねになると、

「私は鞠の精である。あなたが見事に蹴っていらっしゃるので、鞠の本当の姿を現すのである。」

と言って、消え失せてしまった。そのあともたびたび以前のような男が現れて、瞬きもせず鞠を見ていた。何とも不思議なことだ。

 

『ツッコミ解説』

もちろん、蹴鞠は当時の貴族たちの遊びであり、ゆえに鞠の精が男の姿であってもなんら不自然なことはありません。ただ、現在の感覚だと鞠は蹴鞠というより手鞠であって、おかっぱ黒髪の童女が手鞠歌なんぞを口ずさみながらついている、そんなイメージの方が強いのではないでしょうか。その点で言うとやはり違和感があるわけですが、サッカーボールの精ぐらいに考えておけば小男であるのも納得もいくのではと思います。