古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!!
さて、今回の作品は『十訓抄(じっきんしょう)』から『すべて、蜂は短小な虫なれども』です。現代人の感覚では『そうはならんやろ!!』というツッコミどころが満載のこのお話。どうぞお楽しみください!
【このお話のツッコミポイント】
蜂、式神レベルの活躍
『原文』
すべて、蜂は短小な虫なれども、仁智(じんち)の心ありといへり。
されば、京極太政大臣宗輔公は、蜂をいくらともなく飼ひたまひて、「なに丸」「か丸」と名を付けて、呼びたまひければ、召しにしたがひて、恪勤者(かくごしゃ)などを勘当(かんどう)したまひけるには、「なに丸、某刺して来(こ)。」とのたまひければ、そのままにぞ振る舞ひける。
出仕の時は車のうらうへの物見に、はらめきけるを、「とまれ。」とのたまひければ、とまりけり。世には蜂飼ひの大臣(おとど)とぞ申しける。不思議の徳、おはしける人なり。
『現代語訳』
一般的には蜂は短小な虫である(との認識)だが、温かく賢い心があるといえる。
それゆえ京極太政大臣の宗輔公は、蜂を無数にお飼いになって、(それぞれの蜂に)「なんとか丸」とか「かんとか丸」と名前をつけてお呼びになっていたところ、(蜂たちは大臣の)命令に従い、大臣に仕えた侍などをこらしめる際に、「なんとか丸、誰それを刺してこい。」と(大臣が)おっしゃると、(蜂は)おっしゃる通りにしたのだった。
勤めに出る時に牛車の両側の物見窓に、(蜂が)乱れ飛んでいたのを、(大臣が)「止まれ」とおっしゃたら、(蜂は)止まったのだった。世間では「蜂飼いの大臣殿」と申し上げた。不思議な能力をお持ちの方だった。
『ツッコミ解説』
蜂には温かく賢い心がある・・・1行目からただならぬ気配を感じるこのお話。主人公の宗輔公は蜂を思いの通り操る特異な能力を持ち、太政官の最高位”太政大臣”に任ぜられるほどの御仁である。
蜂たちは、安倍晴明でいう式神たる存在で、宗輔公が「あいつ、刺してこいや!!」と命を下すと、蜂たちはわっせわっせと対象に向って押し寄せる。
ああ、願わくは使役する蜂がスズメバチではありませんように!できれば、ミツバチレベルでお願いしたい。
しかし、宗輔公に仕える部下も災難である。主の不興を買えば「ぶ~ん」と蜂たちがやって来るのだから。斜め上をいくブラック環境である。
それでもせめて蜂による制裁は1回に留めておいてほしい。アナフィラキシーショックも心配だから。
bing image creatorにて作成した宗輔公イメージ。陰陽師っぽくてカッコイイ!!