古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!!
さて、今回の作品は江戸時代前期に朝井了見によって書かれた仮名草子『浮世物語』より『自慢するは下手芸といふ事』(抜粋)です。どうぞお楽しみください!
【このお話のツッコミポイント】
いや、飛んでいるのだが?
『原文(入試用問題文)』
ある者座敷を立てて、絵を描かする。しらさぎの一色を望む。絵描き、
「心得たり」
とて、焼筆(やきふで)をあつる。亭主のいはく、
「いづれも良ささうなれども、このしらさぎの飛びあがりたる、羽づかひがかやうでは飛ばれまい」
といふ。絵描きのいはく、
「いやいやこの飛びやうが第一の出来物ぢや」
といふうちに、本のしらさぎが四、五羽うちつれて飛ぶ。亭主これを見て、
「あれ見たまへ。あのやうに描きたいものぢや」
といへば、絵描きこれを見て、
「いやいやあの羽づかひではあつてこそ、それがし描いたやうにはえ飛ぶまい」
というた。
『現代語訳』
ある者が部屋をつくってそのふすまに絵を描かせた。しらさぎだけを描いて仕上げるように注文した。絵描きは、
「承知しました」
と言って、焼筆で下絵を描いた。屋敷の主人が言うことには、
「どれもよさそうではあるが、このしらさぎが飛び上がっている様子は、羽づかいがこのようでは飛ぶことができまい」
と言う。絵描きが言うことには、
「いやいやこの飛ぶ様子がこの絵のもっともすばらしいところなのだ」
と言っていると、本物のしらさぎが四五羽群がって飛んでいた。屋敷の主人がこれを見て、
「あれをご覧なさい。あのように描いてもらいたいものだ」
と言うので、絵描きはこれを見て、
「いやいやあの羽づかいでは、私が描いたようには飛ぶことができまい」
と言った。
『ツッコミ解説』
この話を読んだときにこのような”走る馬”の絵を思い出しました。
気持ちは分かるんですけど、馬はこんな風に前後の足を揃えて走ることはないですね。今回のしらさぎの絵も同じような違和感があったのだと思います。
絵師も絵師で、プロとしてプライドもあるのかもしれませんが、”まずいな”と思ったら、潔く退くことも必要でしたね。だって、しらさぎは実際に飛んでいるのですから。
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