古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!!
さて、今回の作品は耳嚢より『頓智にて危難を救いし事』です。一体、誰のどんな危機なのでしょうか。どうぞお楽しみください!
【このお話のツッコミポイント】
でも泥棒なんだよな~
『原文(入試用問題文)』
ある若きもの、両人連れにて、柚(ゆず)の多くなりしを見て、
「取りていへづとにせん」
と、余程(よほど)の大木なればその柚を盗み取るべき工夫をして、一人は木の下に立ち、一人はその木に登りけるが、登る時は柚を取るべきに心奪はれてとかくして登り、取りては下に落とし、木のもとに立ちし男ひろひて懐(ふところ)へ入れしが、
「最早(もはや)程よき間、下りさうらふやう」
下より申しければ、
「心得さうらふ」
とて、かの木を下りんとせしが、柚は尖(とげ)ある木ゆゑ足手を痛め、
「なかなか下り難き」
とて、ことのほか難儀せしを、下に立ちたる男、
「飛ぶべき」
よしを教へければ、
「高き木なればなかなか眼くるめきて飛ばれざる」
よしを答へければ、下の男も困りて、
「いかがせん」
と思ひしが、ふと思ひつきて、
「盗人、盗人」
と声たてければ、上なる男おほいに驚き木の上より飛び下りけるゆゑ、手を取りて早々かの場所を立ち去りけるとなり。
『現代語訳』
ある若い者が、二人連れで、柚がたくさんなっていたのを見て、
「取ってみやげにしよう」
と(考え)、かなりの大木なのでその柚を盗みとるような工夫をして、一人は木の下に立ち、(もう)一人はその木に登ったが、登る時は柚を取ることに気を取られてあれやこれやとして登り、(柚を)取っては下に落とし、木の下に立った男が拾ってふところに入れたが、
「もうそろそろいいので、下りてらっしゃい」
と下から言ったところ、
「わかりました」
と言って、その木を下りようとしたが、柚はとげのある木なので足や手を痛め、
「簡単には下りられない」
と言って、思いのほか苦労しているので、下に立っていた男が
「飛び下りればよい」
ということを教えたところ、
「高い木なのでどうにも目が回って飛べない」
ということを答えたので、
下の男も困って、
「どうしよう」
と思ったが、ふと思いついて、
「泥棒泥棒」
と声を上げたところ、上にいる男はひどく驚き木の上から飛び下りたので、手を取って急いでその場所を立ち去ったということである。
『ツッコミ解説』
いやいや違うのよ。
頓智を利かして危機を脱出・・・うん、確かにネタとしてはアリだとは思う。
でもね。あんたたち泥棒なのよ。
ギリセ~フとかじゃないから。結局盗んじゃってるから。
このエピソードを「上手くやったネ」ぐらいのテンションで紹介しているところが、今と昔の犯罪意識の違いを感じますよね。
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