古文独特の世界観を現代人ならではのツッコミを入れながら楽しく学んでいきましょう!!
さて、今回の作品はお馴染み『宇治拾遺物語』より『桜の散るを見て泣くこと』です。どうぞお楽しみください!
【このお話のツッコミポイント】
稚児は良い子です!
『原文(入試用問題文)』(出題:大分2024)
これも今は昔、田舎の児(ちご)の比叡の山へ登りたりけるが、桜のめでたく咲きたりけるに、風のはげしく吹きけるを見て、この児さめざめと泣きけるを見て、僧のやはら寄りて、
「などかうは泣かせたまふぞ。この花の散るを、惜しう覚えさせたまふか。桜ははかなきものにて、かく程なくうつろひさぶらふなり。されども、さのみぞさぶらふ。」
となぐさめければ、
「桜の散らんは、あながちにいかがせん、苦しからず。わが父の作りたる麦の花散りて、実の入らざらん思ふがわびしき」
と言ひて、さくりあげて、よよと泣きければ、うたてしやな。
『現代語訳』
これも今とはなっては昔のことだが、田舎の稚児で比叡山延暦寺に登って(修行をして)いた子が、桜が見事に咲いていた時に、風が激しく吹いていたのを見て、この稚児がしくしくと泣いていたのを(一人の僧が)見て、その僧がそっと近寄って、
「どうしてこのように泣きなさるのですか。桜ははかないものであって、このようにすぐ散るのでございます。けれどもそれだけのことでございます。」
と慰めたところ、
「桜が散るようなことは、非常にどうしようもないことです。(どうしようもないのだからそれを)嘆かわしいとは思いません。私の父が作った麦の花が散って、実が入らないのではないかと思うのがつらいのです。」
と言って、しゃっくりをあげておいおいと泣いたところが、なんとも情けないことだなあ。
『ツッコミ解説』
この稚児、普通に親思いの良い子ですよね?
むしろですよ、泣いている子供を見かけてその理由を聞いた時に
「桜の花が散っていくのが悲しいのです。」
と返されたら
「おっ、おう・・・。」
ってなりません?
自分の父が汗水垂らして育てた麦が心配なんです。散る桜なんぞはどうでもいいこと。その思い、情けないなんてことありませんよね。
ただ、この「うたてしやな(情けないことだ)」についてはいろいろな解釈がありまして、
①僧が風流を解しない稚児のことを情けないと思っている。
②筆者が風流を解しない稚児のことを情けないと思っている。
③筆者が間抜けなことを言った僧を情けないと思っている。
などがあります。息子を持つ私としてはここは全力で③を支持したいと思います。
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